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学力は世界トップクラス。なのに日本の教育は世界34位|IMDランキング2026の中身

「日本の教育は世界に遅れている」という話を見かけて、子どもの進路を国内で考えていていいのか不安になった保護者へ。IMDの2026年版ランキングで日本の教育が70カ国・地域中34位だったこと、PISAは世界の上位グループなのに34位になる理由、そして20項目のうち何が強くて何が弱いのかを、一次資料から整理しました。

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日本の教育は、このままで通用するのか。子どもの進路を調べていると、そう書かれた記事や動画に定期的にぶつかります。

根拠としてよく引かれるのが、スイスのビジネススクールIMDが毎年出している世界競争力ランキングです。

2026年版で日本は30位。前年の35位から5つ上がりました。

上がったのに「日本は低迷している」という書かれ方をすることが多く、結局いいのか悪いのか分からないまま不安だけが残ります。

このランキングは20の項目に分かれていて、そのうちの1つが「教育」です。日本の教育は70カ国・地域中の34位でした。

この34位が何を測った結果なのかを、一次資料から整理しました。

IMDのランキングは「教育ランキング」ではない

IMD世界競争力ランキング(World Competitiveness Ranking)は、企業が事業をするうえでその国がどれだけ有利かを比べたものです。

2026年版は6月18日に公表され、70カ国・地域が対象になりました。

順位表と各国のスコアはIMDの公式サイトで公開されていて、詳しい内訳はWorld Competitiveness Booklet 2026(PDF)に載っています。

構成は4つの大分類(経済パフォーマンス/政府の効率性/ビジネスの効率性/インフラ)で、その下に20の項目、さらに341の指標がぶら下がっています。

教育は「インフラ」の中に置かれた20項目のうちの1つで、どの項目も総合順位への重みは同じ5%です。

見落とされやすいのは、データの出どころです。341指標のうち3分の2は各国の統計で、残りの3分の1は企業の管理職に聞いたアンケートです。

学校を評価するために設計された調査ではなく、企業から見て人材や環境が足りているか、という視点で並んだ指標です。

日本は総合30位。数字は上向いている

まずは、悪くないほうの数字から。日本の総合順位は2年続けて上がっています。

日本の総合順位の推移(IMD世界競争力ランキング)

単位:位(上にあるほど上位)

出典:IMD World Competitiveness Booklet 2026

この5年でもっとも高い順位です。4つの大分類で見ると、内訳はかなり偏っています。

2026年前年
インフラ16位19位
経済パフォーマンス23位23位
政府の効率性35位38位
ビジネスの効率性49位51位

インフラは世界16位で、上位グループに入っています。一方でビジネスの効率性は49位。

同じ国の評価とは思えないほど離れていて、この差が総合30位という中間的な数字を作っています。

20項目に分けると、教育は34位

日本の20項目を、70カ国・地域中の順位が高いものから並べるとこうなります。

雇用5位税制35位
科学インフラ7位基礎インフラ41位
国内経済8位国際投資42位
健康・環境9位公的財政43位
技術インフラ21位価値観と姿勢45位
制度的枠組み22位国際貿易49位
金融23位価格50位
社会的枠組み27位生産性・効率性52位
教育34位労働市場52位
ビジネス法制34位経営プラクティス57位

ここで目を引くのは、科学インフラが7位、雇用が5位と、教育の周辺にあるはずの項目が世界トップ10に入っていることです。

研究の基盤と働き口はある。そのあいだにある教育が中位にとどまっている、という並びになっています。

「教育34位」は何を測った34位なのか

教育の項目は19の指標でできています。統計から取られているのは、次のようなものです。

  • 教育への公的支出(GDP比、国民1人あたり、生徒1人あたり)
  • 教員1人あたりの生徒数(初等教育・中等教育)
  • 中等教育の就学率
  • 25〜34歳で高等教育を修了した人の割合
  • 学位を持つ女性の割合
  • 留学生の受け入れ数と、海外へ出る学生の数
  • PISAの成績と、低得点層に入らない生徒の割合
  • TOEFLのスコア
  • 識字率
  • 世界大学ランキングをもとにした指数

残りの4つは、IMDが毎年行っている「経営者意識調査(Executive Opinion Survey)」から取られています。

回答するのは、その国で働く中間管理職から役員クラスまでの人たちです。業種の構成が国のGDP構成比に近くなるように選ばれます。

その国に1年以上住んでいることが条件で、答えるのは自分が働いている国についてだけです。

2月に配って4月に回収し、2026年版は70の国・地域から6,900件を超える回答が集まりました。

統計では測りにくいもの(経営のやり方、企業の機敏さ、変化への姿勢など)を数値にするための調査だと、IMD自身が説明しています。

つまり日本の教育に点を付けているのは、日本で働いている企業の管理職ということになります。聞かれているのは次の4つです。

初等中等教育は競争力ある経済のニーズを満たしているか

小中高の教育が、企業から見て必要な人材を育てられているかを尋ねる項目です。

大学教育は競争力ある経済のニーズを満たしているか

大学で学んだ内容が、企業の現場で必要とされるものと噛み合っているかを尋ねる項目です。

経営教育はビジネス界のニーズを満たしているか

MBAをはじめとする経営者・管理職向けの教育に対する評価です。

語学力は企業のニーズを満たしているか

TOEFLのスコアとは別に、実務で使える語学力があるかを主観で評価する項目です。

19の指標のうち、子どもの学力を直接測っているのはPISAの2つだけです。

残りはお金の使い方、進学率、留学生の数、そして企業から見た評価が占めています。

学力は世界の上位。それでも教育は34位

PISAは、OECDがおおむね3年ごとに実施している15歳対象の学力調査です。読解力・数学的リテラシー・科学的リテラシーの3分野で、知識をどれだけ実生活の場面で使えるかを測ります。2022年の調査には81カ国・地域から約69万人が参加し、日本からは高校1年生にあたる学年の約6,000人が回答しました。

結果は、OECD加盟37カ国中で数学的リテラシー1位・読解力2位・科学的リテラシー1位。全81カ国・地域で見ても数学5位・読解3位・科学2位です(国立教育政策研究所PISA2022のポイント)。15歳時点の学力は世界の上位グループにいます。

それでも教育の項目が34位になるのは、英語のスコア、海外に出る学生・受け入れる学生の数、企業から見た大学教育や語学力の評価など、学力以外の指標が同じ項目に同居しているからです。

いちばん低いのは経営プラクティスの57位

20項目の最下位は経営プラクティスの57位でした。この項目の指標は、ほとんどがさきほどの経営者意識調査です。

「企業は機敏か」「市場の変化に気づいているか」「機会と脅威に素早く反応できているか」「経営者は社会から信頼されているか」「起業家精神は広がっているか」といった内容が並びます。

この57位を「日本の学校教育の失敗」と結びつけるのは、少し飛躍があると思います。

答えているのは現役の管理職で、その人たちが学校にいたのは20年から40年前です。今の中高生が受けている教育の結果がここに出ているわけではありません。

ただ、評価が低い中身を見ると、日本の学校が長いあいだ点数にしてこなかったものと重なります。

変化への反応の速さ、外の考え方に触れた経験、自分で決めて動くこと。

同じ性質の項目である「価値観と姿勢」(グローバル化への姿勢、外国の考えへの開かれ方、新しい課題に直面したときの柔軟性などを尋ねる項目)も45位です。

偏差値や内申点は、そもそもこれらを測る物差しとして作られていません。どちらが上という話ではなく、測っている対象が違うということです。

学校側の物差しも、一つではなくなってきた

ここ数年で、こうした力を評価しようとする仕組みが学校や入試の側に増えています。日本の学校教育から離れないと身につかない、という話ではありません。

どれを選んでも順位が上がるわけではありませんし、全員に向いているわけでもありません。

ただ、進路の選び方が偏差値の一本道だった時期に比べると、入口の数は確実に増えています。

30位も34位も、いまの日本を切り取った数字です。点を付けているのは、いま働いている大人たち。

10年後、20年後に同じ調査に答えるのは、これから進路を選ぶ人たちです。

探究でも、留学でも、通信制でも、自分に合う入口を見つけて外の世界に触れた人が増えていけば、数字はあとから追いついてくると思います。

子どもの前に開いている扉は、この記事を読んでいる大人が10代だったころより、多くなっているはずです。

まとめ

  • 総合30位:前年35位から上昇。2年連続で上がっている
  • 教育は34位:70カ国・地域中。20項目の中では真ん中あたり
  • 学力は上位:PISA2022はOECD内で1〜2位。教育の順位は学力だけでは決まらない
  • 最下位は経営プラクティス57位:中身は現役管理職への意識調査。今の学校教育の成績表ではない
  • 強い項目もある:雇用5位、科学インフラ7位、健康・環境9位

次にやること — 気になっている学校のパンフレットで、探究学習や海外研修のページに「何を発表したか」「どこへ何人が行ったか」が具体的に書かれているかを見てみてください。抽象的な言葉だけが並んでいるか、実例が載っているかで、その学校の力の入れ方がかなり分かります。

※順位はIMDのWorld Competitiveness Ranking 2026およびWorld Competitiveness Booklet 2026に基づきます。日本の総合順位と大分類の順位はジェトロの解説でも確認できます。PISAの結果は国立教育政策研究所のPISA2022のポイントによります。

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