年収の高い仕事に就くための大学選び|就職ランキングの人数は、大学の規模で決まっている
就職ランキングの上位はいつも同じ大学。でも就職者数を卒業生数で割り直すと、7業種すべてで1位が入れ替わります。東洋経済『本当に強い大学2026』の実データで確かめました。
「年収の高い仕事に就きたい」。
そう思って大学を調べ始めると、たいてい就職ランキングにたどり着きます。メガバンク、5大商社、外資系コンサル。どの業種を開いても、上位の顔ぶれは同じです。
慶應義塾と早稲田が、交互に並んでいる。
そこで手が止まる人は多いと思います。その大学に届く気がしない。届いたとして、ランキングに数えられている何百人かに自分が入れるとは限らない。
結局このランキングは、何の役に立つのか。
ここに並んでいる就職者の「人数」が何で決まっているのか。そこを見ると、受け取り方が変わります。
ランキングの就職者数は、卒業生の数と連動している
東洋経済『本当に強い大学2026』に、高年収とされる業種への就職者数を大学別に並べたページがあります(就職データの出所は大学通信、各大学発表による2025年の就職状況)。
対象企業は業種ごとに絞られています。メガバンクなら3社。5大商社なら5社。外資系コンサルなら6社。
その業種に何人が就職したか。この人数の1位は、ほとんどの業種で慶應義塾か早稲田です。
ただ、この2校には他の大学と決定的に違うところがあります。卒業生の数です。
卒業生数(就職の割合を計算するときの分母)
早稲田と慶應義塾は、一橋・東京外国語・国際基督教の10倍前後の規模です。
単位:人
早稲田大学
慶應義塾大学
一橋大学
東京外国語大学
国際基督教大学
※出典: 東洋経済『本当に強い大学2026』(就職データの出所は大学通信、各大学発表による2025年の就職状況)。同誌が業種別の割合を算出するときに分母として使っている卒業者数。
1万人が卒業する大学と、1,000人が卒業する大学。この2つを就職者の人数で並べれば、卒業生の多いほうが上に来ます。
ランキングの上位は、就職に強い大学の順位であると同時に、大学の規模の順位でもあります。
卒業生数で割ると、7業種すべてで1位が入れ替わる
同じページには、その就職者数が卒業者数の何%にあたるかを示す数字も一緒に載っています。
就職者数ではなく、こちらで並べ直す。それだけで、7つの業種すべてで1位が変わります。
| 業種 | その業種に就職した人数が多い大学 | その人数が卒業生に占める割合が高い大学 |
|---|---|---|
| メガバンク | 慶應義塾 272人(3.5%) | 一橋 53人(5.3%) |
| 外資系コンサル | 慶應義塾 268人(3.5%) | 国際基督教 25人(3.9%) |
| 5大商社 | 慶應義塾 114人(1.5%) | 一橋 21人(2.1%) |
| 大手不動産 | 慶應義塾 43人(0.6%) | 一橋 9人(0.9%) |
| テレビ局 | 早稲田 62人(0.5%) | 一橋 6人(0.6%) |
| 新聞・通信社 | 早稲田 31人(0.3%) | 東京外国語 9人(0.9%) |
| 出版社 | 早稲田 16人(0.1%) | 東京外国語 4人(0.4%) |
数えている対象企業は、メガバンク3社・外資系コンサル6社・5大商社5社・大手不動産5社・テレビ局6社・新聞・通信社7社・出版社4社。
カッコ内の%は、その人数が卒業生全体の何%にあたるかです。
テレビ局だけは注意が必要です。割合が0.6%の大学は一橋のほかに上智と慶應義塾もあり、実質的に横並び。
割合は小数第1位までしか公表されていないので、この程度の差は順位として読めません。
残る6業種は、はっきり差がついています。メガバンクなら、一橋の5.3%に対して慶應義塾は3.5%。
開きがいちばん大きいのは新聞・通信社で、早稲田の0.3%に対して東京外国語が0.9%です。
ランキングの上位にいることと、自分がそこに入れる確率が高いことは、別のこと。
「卒業者数 ÷ 就職者数」で、何人に1人かに直すと差がはっきりします。
新聞・通信社に進むのは、早稲田で374人に1人。東京外国語で107人に1人。就職者数では早稲田が3倍多いのに、同級生の中での割合では東京外国語が3.5倍高いことになります。
入れ替わらない業種もある
とはいえ、「割合で見ればランキングはひっくり返る」と一般化はできません。
広告(電通・博報堂・サイバーエージェント・ADKホールディングス・東急エージェンシーの5社)だけは、慶應義塾が95人・1.2%。就職者数も割合も1位でした。
7,706人が卒業する大学が、卒業生1,000人前後の大学を割合でも上回っている。
卒業生数の差で説明がつく業種と、つかない業種がある。どちらなのかは、業種ごとに割り算をしてみないと分かりません。
就職者数と割合、どちらを見ても分からないこと
並べ替えたところで、この就職データから読み取れる範囲が広がるわけではありません。分からないままなのは、次の4つです。
入試で選ばれた結果なのか、大学で伸びた結果なのか分からない
割合が高い大学には、入学の段階で成績上位層が集まっています。その人たちがもともと持っていた力によるものなのか、大学の4年間によるものなのか。この数字では切り分けられません。「この大学に入れば就職できる」とは読めないということです。
卒業生が少ない大学は、割合が振れやすい
国際基督教は642人中25人で3.9%。この25人が数人増減するだけで、割合は大きく変わります。1年分の実績で小規模校の順位を確定的に扱うのは無理があります。
年収そのもののデータではない
「高年収とされる業種に何人就職したか」であって、卒業生一人ひとりの年収ではありません。同じ業種の中でも、職種と勤続年数で差がつきます。
2025年の1年分でしかない
各大学が発表した2025年の就職状況の集計です。採用数は企業の業績と方針で毎年動きます。数年分を並べないと、傾向までは見えません。
割合1位の大学も、業種が変われば順位が下がる
ここまで、就職者数より割合のほうが、自分が入れる確率に近い数字だと書いてきました。
ただ、割合にも限界があります。見る業種を変えれば、割合の順位もまた動くからです。
東洋経済『本当に強い大学2026』には、大学通信が選んだ主要企業400社への「実就職率」という指標も載っています。
業種を1つに絞らず、大手全般への就職しやすさをまとめて見るものです。
計算式は「その400社への就職者数 ÷(卒業者数-大学院進学者数)」。大学院に進んだ人を分母から除いている点が、ここまでの業種別の割合とは違います。
主要企業400社への実就職率
外資系コンサルの割合で1位だった国際基督教、新聞・出版の割合で1位だった東京外国語は、大手全般では慶應義塾・早稲田を下回ります。
単位:%
一橋大学
慶應義塾大学
早稲田大学
国際基督教大学
東京外国語大学
※出典: 東洋経済『本当に強い大学2026』(出所は大学通信、2025年の就職状況)。同誌の「有名400社実就職率」。実就職率は就職者数÷(卒業者数-大学院進学者数)×100で、対象は大学通信が選定した主要400社。
外資系コンサルの割合で1位だった国際基督教は28.2%。新聞・出版の割合で1位だった東京外国語は27.2%。
どちらも、慶應義塾(46.7%)や早稲田(39.3%)を下回ります。
1つの業種に強いことと、大手全般に届きやすいことは別。「卒業生が少ない大学のほうが割合で有利」という読み方も、そのまま当てはめると外れます。
このデータから取り出せるのは、「志望する業種を決めて、その業種の割合を見る」というところまでです。
大学が出す「就職率」も、同じように読む
大学が公表する就職率も、分母が「就職希望者」か「卒業者全体」かで数字が変わります。
全体平均は98.0%(令和6年度・就職希望者ベース)。どの大学もほぼ100%に並ぶ指標なので、大学ごとに比べても差は読み取れません。
分母の作られ方は就職率が高い大学の選び方で扱っています。学部から決めたい場合は、大学の学部・学科の選び方のほうが近いと思います。
志望校の数字を、自分で割ってみる
大学が公表している就職実績のページには、主要企業への就職者数が載っていることがあります。
やることは1つ。卒業者数 ÷ 就職者数。これで「何人に1人」の形になります。
卒業者数が併記されていない場合は、大学案内の巻末か、大学ポートレートで調べられます。
自分で割ってみると、「〇〇社に△名」という表記の印象はかなり変わります。学部単位で出している大学なら、学部ごとの差も見えてきます。
Eduriaの大学ページでは、学費・偏差値・就職率を同じ形式で並べています。この記事で挙げた大学は次のとおりです。
| 大学 | 今回の就職データでの位置 |
|---|---|
| 慶應義塾大学 | 7業種のうち4業種で就職者数1位。広告は就職者数・割合とも1位 |
| 早稲田大学 | テレビ局・新聞・出版で就職者数1位。卒業生11,602人 |
| 一橋大学 | メガバンク・5大商社・不動産で割合1位。主要400社への実就職率53.4% |
| 国際基督教大学 | 外資系コンサルで割合1位(卒業生642人中25人) |
| 東京外国語大学 | 新聞・通信社と出版社で割合1位(卒業生962人中、9人と4人) |
他の大学も大学の一覧から学費や就職率で比較できます。
企業の側から見たいなら、アクセンチュアのように、その企業を主な就職先に挙げている学校をまとめたページもあります。
まとめ
- 就職者数の1位は規模の1位:卒業生は早稲田11,602人・慶應7,706人に対し一橋1,007人
- 卒業生数で割ると入れ替わる:メガバンク・商社・不動産は一橋、外資コンサルは国際基督教が割合1位
- 差は3倍前後:新聞・通信社に進むのは早稲田374人に1人、東京外国語107人に1人
- 例外もある:広告は慶應義塾が就職者数・割合とも1位
- 割合も万能ではない:主要400社への実就職率は国際基督教28.2%・東京外国語27.2%
次にやること — 志望校の就職実績ページを開いて、行きたい業種の就職者数を卒業者数で割ってみてください。「何人に1人」に直すと、パンフレットの印象とのズレが見えます。
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※就職者数・就職率・卒業者数は東洋経済『本当に強い大学2026』に掲載された数値によります(就職データの出所は大学通信、各大学発表による2025年の就職状況)。就職率全体の平均値は文部科学省・厚生労働省の令和6年度大学等卒業者の就職状況調査によります。
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