留学制度がある高校の選び方|交換留学・語学研修・海外修学旅行の違いを見分ける
「留学制度あり」と書かれた高校を見比べても、どこも同じに見えて中身の違いが読み取れない中学生・保護者へ。その一文の下には交換留学・ターム留学・語学研修・海外修学旅行という性質の違う4つの制度が混ざっています。実在する高校の紹介文をもとに、見分け方と費用の差を整理しました。
「本校には留学制度があります」。学校説明会でこの一文を聞いて心が動いた保護者は多いと思います。
ただ、何校か見比べているうちに、どの学校も同じことを言っているように見えてきます。
地球儀のイラストと、「グローバル教育」という言葉と、海外にいる生徒の写真。違いが読み取れないまま、志望校を絞る時期だけが近づいてくる。
実際、その「留学制度」が何を指すかは学校によってまるで違います。ある学校では選考を通った生徒だけが1年間、海外の提携校に通う。
別の学校では夏休みの2週間だけ全員でホームステイをする。さらに別の学校では、修学旅行の行き先がたまたま海外というだけです。
Eduriaが登録高校1,219校を調べたところ、留学・海外研修に関する何らかの制度を持つ学校は466校ありました。
留学・海外研修制度がある高校(Eduria登録1,219校中)
全体の約38%出典:Eduria調べ(2026年7月時点、学校公式サイトの記述をもとに集計)
3校に1校以上という数字だけを見れば、「留学できる高校」は珍しくないように見えます。ただ、この466校が指している中身は一枚岩ではありません。
費用も、参加できる生徒の範囲も、卒業後の進路への効き方も違う4種類の制度が、同じ言葉の下に混ざっています。
「留学制度あり」の中に隠れている4つの制度
高校が用意する海外関連プログラムは、大きく4つに分かれます。
名前が似ているので混同されがちですが、参加できる生徒の範囲・期間・費用の負担のされ方が制度ごとに大きく違います。
| 制度 | 内容 |
|---|---|
| 交換留学・1年留学 | 半年〜1年程度、海外の提携校や語学学校に長期滞在する。選考を経て一部の生徒だけが参加することが多い |
| ターム留学・短期留学 | 数週間〜3ヶ月程度の派遣。1年留学より参加のハードルが低く、語学力向上を主目的にする学校が多い |
| 語学研修 | 夏休みなど長期休暇中に実施する1〜3週間程度の短期プログラム。学年やコース単位で全員参加になっているケースもある |
| 海外修学旅行 | 学年行事としての海外訪問。教育旅行としての位置づけで、留学とは性質が異なる |
この4つを混同したまま「留学制度が充実している」というパンフレットの一文で学校を決めると、入学後に食い違いが起きます。
全員参加の修学旅行しかない学校を、1年留学ができる学校だと思ったまま志望校にしてしまう、というのがその典型です。
実際の高校の記述で、4つの違いを確認する
定義だけでは、パンフレットの文章から何を読み取ればいいのかが掴めません。
そこで、Eduriaに登録されている実在の高校の紹介文を、制度ごとに並べてみます。
交換留学・1年留学:選考を経て、腰を据えて学ぶ
長期にわたる交換留学・1年留学は、コース名やプログラム名として明示されていることが多いです。
- 早稲田高等学校(東京都): 「交換留学プログラムで、世界的視点を備えた早稲田推薦・一般合格者を輩出」
- 立命館宇治高等学校(京都府): 「IG・IM・IB の段階的3段階コースで世界水準のグローバル人材養成を実現」「国際バカロレア資格取得対応」
- 佼成学園女子高等学校(東京都): 「SA(ニュージーランド1年留学)、SG(国際教育)、AH(難関大学対応)、SC(総合)の4類型」
- 大阪学芸高等学校(大阪府): 国際科に「ダブルディプロマコース」「グローバルコース」「1年留学コース」を設置
- 宇都宮文星女子高等学校(栃木県): 「オーストラリア1年留学コースを設置」
- 不二聖心女子学院高等学校(静岡県): 「長期・短期・ターム留学や海外体験プログラムなど留学制度が充実」
いずれも「◯年留学コース」「交換留学プログラム」という言い方で、期間と制度の性質が名前に織り込まれています。
コース名にこうした表記がある学校は、長期の留学を前提にカリキュラムが組まれていると読めます。
語学研修:夏休みなどの短期プログラム
語学研修は、名称に「◯◯研修」「語学研修」という言葉が使われ、行き先の国名とセットで書かれていることが多いです。
- 武蔵野高等学校(東京都): LTE(全英語授業)と異文化プログラムに加え、「セブ島語学研修あり」
- 鹿児島第一高等学校(鹿児島県): 「ニュージーランド語学研修を主要プログラムとして実施」
- 立川女子高等学校(東京都): 「British Hills・TGG での語学研修とICT活用で実践的な英語力と国際的視野を養成」
語学研修は1〜3週間程度で完結するので、1年留学より参加できる生徒の幅は広くなります。
学年やコース単位で全員参加になっている学校もあれば、希望者を募る学校もあり、ここは紹介文だけでは分かりません。
海外修学旅行:留学ではなく学年行事
修学旅行は学年全員が参加する教育旅行で、選考も長期の英語準備も基本的には要りません。
- 鵠沼高等学校(神奈川県): 「修学旅行・海外研修プログラムあり」
- 橿原学院高等学校(奈良県): 「修学旅行でオーストラリア・ケアンズへの海外研修と現地高校との交流活動を実施」
- 駒込高等学校(東京都): 「セブ島研修・東南アジア修学旅行によるグローバル教育」
- 精道三川台高等学校(長崎県): 「1988年からオーストラリア・レッドフィールド校と30年以上の交流」「高2修学旅行はホームステイを実施」
駒込高等学校の例は、1校の中に「セブ島研修」と「東南アジア修学旅行」という2つの制度が併存していることを示しています。
紹介文に複数の制度名が並んでいる場合、それぞれが4つのどれに当たるのかは1つずつ見分けることになります。
複数の制度を組み合わせている学校もある
進学校や国際教育に力を入れる学校の中には、4つの制度を段階的に組み合わせている例もあります。
- 立命館慶祥高等学校(北海道): 高校2年時に「8コース選択型海外研修(ガラパゴス・東南アジア・豪州・NASA研修等)」を展開。スーパーサイエンスハイスクール(SSH)にも指定されている
- 聖ウルスラ学院英智高等学校(宮城県): 「31もの多彩な留学プログラムを展開、短期〜中長期に対応」
- 筑紫女学園高等学校(福岡県): 「CJ-GLOBAL DDP(ダブル・ディプロマ)」など独自プログラムで国際感覚と実践力を養成
- 鹿児島修学館高等学校(鹿児島県): 国際バカロレア(IB)MYP認定校。「海外修学旅行(高2年生)」に加え、「トビタテ!留学JAPAN」(文部科学省が後押しする官民協働の留学支援制度、詳細は公式サイト)への参加実績もある
こうした学校には「留学制度が充実している」という表現がそのまま当てはまります。ただ、466校の大半はここまで手厚いわけではありません。
海外修学旅行だけなのか、語学研修まであるのか、1年留学の枠があるのかは、学校ごとに分かれます。
国・地域で見る傾向
466校の紹介文の中で、行き先として名前が挙がった国・地域の回数を数えると、次のような傾向が見えます。
行き先として登場した国・地域(重複含む)
単位:校
オーストラリア
ニュージーランド
カナダ
イギリス
アメリカ
セブ島(フィリピン)
※466校の学校紹介文中に国・地域名が登場した回数(Eduria調べ、2026年7月時点、1校が複数国に言及するケースを含む)
オーストラリア・ニュージーランドが上位に来るのは、時差が少なく、治安・費用の面で学校側が選びやすいという事情が背景にあるとされます。
一方でセブ島は語学研修先として近年広がっている行き先で、武蔵野高等学校や駒込高等学校のように、1〜2週間の短期プログラムとして組み込まれる例が目立ちます。
制度名の登場回数を見ても、同じ傾向が出ています。
| 制度に関する表記 | 登場回数 |
|---|---|
| 語学研修 | 30校 |
| 修学旅行(海外) | 16校 |
| ターム留学 | 7校 |
| 短期留学 | 7校 |
| ホームステイ | 7校 |
| 1年留学 | 4校 |
「語学研修」の登場回数が最も多く、「1年留学」は4校しかありません。
数週間で完結する短期プログラムのほうが、学校側にとって全員参加の形にしやすく費用も抑えやすい、という事情がありそうです。
逆に言えば、1年留学を前提に高校を選ぶなら、候補はかなり絞られます。ここは早めに知っておいたほうが探し方が変わる部分です。
なお、国際バカロレア(IB)やWWL(ワールド・ワイド・ラーニング)といった、海外大学進学そのものを見据えたカリキュラム型の仕組みは別の切り口になります。
この視点は海外大学への進学、中学生のうちから準備することは?で扱っています。
IBのPYP・MYP・DP・CPという4プログラムの違いや国内認定校の一覧は国際バカロレア(IB)認定校とは?に整理しました。
費用感の違いを知っておく
制度によって、必要になる費用の桁も変わります。
留学・研修制度別の費用目安(総額)
単位:万円
海外修学旅行(5〜7日程度)
語学研修(1週間程度)
語学研修(1ヶ月程度)
交換留学・1年留学(私費の場合)
※行き先・学校・為替レートにより差が大きい目安(出典: 留学くらべーる「高校生の留学費用はいくら?」、CW EDUCATION「修学旅行の海外費用はいくら?」)
ターム留学(3ヶ月程度)は、1年留学の3分の1〜4分の1程度が目安とされます(出典: マイナビ留学「ターム留学は中学生や高校生にもおすすめ」)。
ただし同じ記事では、1日あたりの費用は長期の留学より割高になりやすいとも指摘されています。
期間を短くしても、費用が期間に比例して安くなるわけではありません。
交換留学の場合、在籍校の学費を払いながら提携先で学べる仕組みの学校もあり、その場合は渡航費・生活費・保険料が主な追加負担になります。
一方、提携校を持たず個人で休学して留学する形になると、留学先の学費も別途かかり、総額は大きく上振れします。
「交換留学あり」と書かれていても、学費がどこまで在籍校側で吸収されるかは学校ごとに違います。
学校選びで気になるところ
4つのうちどれを指しているか
「留学制度あり」の表記だけでは判断がつきません。交換留学・ターム留学・語学研修・海外修学旅行のどれに当たるかは、学校説明会やパンフレットの詳細ページで分かります
全員参加か、選抜制か
語学研修や修学旅行は全員参加が多い一方、交換留学は選考・成績要件があることが多い。自分の子どもが対象学年・条件に当てはまるかどうかで、話が変わります
費用がどこまで学費に含まれるか
在籍校の学費に含まれる部分と、渡航費・保険料など別途必要になる部分は分けて見ておきたいところです。特に交換留学は学校ごとの学費免除の範囲に差があります
この3点は、公式サイトやパンフレットの記述だけでは読み取りきれないことが多い部分です。
学校説明会や個別相談で、「その留学制度は毎年何人が参加していますか」「費用のうち学校が負担する部分はどこまでですか」と直接聞いてしまう。
遠回りに見えて、これが一番早いと思います。
大学進学・大学での留学につながる話
高校の留学・海外研修制度は、その先の進路とも地続きです。
海外大学への進学そのものを視野に入れているなら、IB・WWL認定校やインターナショナルスクールという別の視点が要ります。
この点は海外大学への進学、中学生のうちから準備することは?高校選び・英語学習の始め方で扱っています。
国内の大学に進学したうえで大学の交換留学・休学留学を使う進路を考えている場合は、留学できる学校の選び方で協定校数や単位互換の見どころを整理しました。
行き先の国で迷ったときは大学留学はどの国がいい?もあります。
よくある質問
「留学制度あり」と書かれていれば、必ず1年留学ができるということですか?
そうとは限りません。修学旅行や短期の語学研修だけを指して「留学制度あり」「グローバル教育に力を入れている」と表現している学校もあります。コース名に「1年留学」「交換留学」といった具体的な期間・制度名が入っているかどうかが見分けの手がかりになります。
英語が苦手でも語学研修には参加できますか?
学校・プログラムによります。語学研修は全員参加型で英語力を問わないことが多い一方、交換留学やターム留学は英語力の基準や校内選考を設けている学校が多いです。対象学年や参加条件は学校ごとに分かれます。
費用が心配な場合、どの制度から検討するのがいいですか?
一律の答えはありません。ただし一般的な傾向として、海外修学旅行や1〜2週間の語学研修は、1年単位の交換留学より総額を抑えやすい場合が多いです。奨学金・助成制度の有無は学校ごとに差が大きく、ここは説明会で聞くのが早いところです。
まとめ
- 「留学制度あり」は4種類の総称:交換留学・ターム留学・語学研修・海外修学旅行
- 1,219校中466校:制度を持つ高校は約38%。ただし中身はばらばら
- 1年留学は4校:紹介文での登場は最少。長期留学が目的なら候補は絞られる
- 費用の桁が違う:修学旅行15〜35万円、1年留学150〜600万円
- 交換留学の学費:どこまで在籍校が吸収するかは学校ごとに違う
次にやること — 志望候補の学校説明会で、「その留学制度には毎年何人が参加していますか」と聞いてみてください。全員参加なのか、数人の選抜なのかがこの1問で分かり、4つのどれに当たるかもほぼ判別できます。
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