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人事部に必要な資格とスキル|必須資格はないのに、なぜ1つだけ会社が求めるのか

人事に異動になった、あるいは人事職を目指して調べ始めたら資格が10個以上出てきて手が止まった人へ。国の職業情報では人事に必須資格はありません。それでも法律で会社が有資格者を必要とする資格が1つだけあります。合格率のデータで優先順位を整理しました。

#人事#資格#社労士#キャリアコンサルタント#衛生管理者#学び直し

人事部に配属された、あるいは人事の仕事に就きたい。

そう思って「人事 資格」で調べると、10個以上が並びます。

社労士、キャリアコンサルタント、衛生管理者、メンタルヘルス・マネジメント検定、簿記、ビジネス実務法務検定……。

全部やる時間はないし、どれが本当に必要なのかも書かれていない。

そこで手が止まっている人は多いと思います。まず、身も蓋もない事実から始めます。

国の職業情報には「必須資格なし」と書かれている

厚生労働省の職業情報提供サイト(job tag)の「人事事務」には、入職に学歴・資格の必須要件はないと明記されています。

求められるものとして挙げられているのは、資格ではありません。

労働法規や人事労務管理の知識、社内他部門や労働組合・行政官庁との調整力、情報収集力。そして個人情報を扱う仕事としての守秘義務と公正な姿勢です。

人事は医師や社会福祉士のような業務独占資格が存在しない職種です。資格を持っていなくても採用・評価・給与計算・社会保険の手続きはできます。

平均年収の目安525.2万円(令和7年・職業名「人事事務」)
全国の就業者数1,057,330人(令和2年国勢調査)
有効求人倍率1.14(令和6年度)

出典は厚生労働省job tag「人事事務」です。

求人倍率1.14は、応募者1人あたり求人が1.14件という水準で、極端な人手不足でも買い手市場でもない中間にあたります。

では資格は無意味なのか。ここに例外が1つあります。

例外は衛生管理者。会社に選任義務がある

衛生管理者だけは、あなたのためではなく会社のために必要とされる資格です。

労働安全衛生法第12条により、常時50人以上の労働者を使用する事業場は衛生管理者を選任する義務があります。人数は規模で決まっています。

50〜200人1人
201〜500人2人
501〜1,000人3人
1,001〜2,000人4人
2,001〜3,000人5人
3,001人以上6人

出典:東京労働局「衛生管理者について」

会社は法令上この人数を揃えなければならず、退職や異動で欠ければ補充が必要になります。

だから人事・総務の担当者に「衛生管理者を取ってほしい」と依頼が来ることが多い。他の資格と性質がまったく違うのはここです。

取れば会社の法令対応に直結するので、社内で評価されるまでの距離がいちばん短い資格でもあります。

免許は第一種と第二種に分かれます。第二種では選任できない業種があるので、勤務先の業種で選ぶ免許が変わります。

第一種衛生管理者

すべての業種で選任できる。農林畜水産業・鉱業・建設業・製造業・電気業・ガス業・水道業・熱供給業・運送業・自動車整備業・機械修理業・医療業・清掃業では原則こちらが必要。

第二種衛生管理者

上記の業種では選任できない。金融・保険・小売・情報通信・サービス業など、有害業務が少ない業種向け。

自社がどちらに当たるか分からないうちは第一種を取っておくと、転職先の業種が変わっても使えます。

合格率で並べると優先順位が見える

人事に関係する主な資格を、最新の合格率で並べます。

人事に関連する資格の合格率

単位:%

メンタルヘルス検定Ⅲ種(第40回)

第二種衛生管理者(令和7年度)

第一種衛生管理者(令和7年度)

メンタルヘルス検定Ⅱ種(第39回)

メンタルヘルス検定Ⅰ種(第39回)

社会保険労務士

※出典:安全衛生技術試験協会(衛生管理者・令和7年度実施試験)、メンタルヘルス・マネジメント検定試験 結果データ(第39回=2025年11月2日、第40回=2026年3月15日実施)、社会保険労務士試験。キャリアコンサルタントは受験資格に養成講習の修了等が必要なため、この比較には含めていない。

衛生管理者は第一種46.8%(66,401人が受験して31,046人合格)、第二種48.7%(40,653人中19,796人)。半分弱が通る試験です。

ただし誰でもすぐ受けられる試験ではありません。受験には労働衛生の実務経験が必要で、必要な年数が学歴で変わります。

大学・短大・高専卒なら1年以上、高校卒なら3年以上、学歴の要件を満たさない場合は10年以上です。

いずれも事業者が発行する事業従事証明書の提出が求められます(安全衛生技術試験協会 第一種衛生管理者)。

人事・総務で労働衛生に関わる業務をしていれば該当します。

ただ、証明書は会社に出してもらう形になるので、受験を決めたら先に社内の手続きを確かめておきたいところです。

メンタルヘルス検定Ⅱ種は、回によって難易度が動く

不都合なデータも書いておきます。メンタルヘルス・マネジメント検定Ⅱ種(ラインケアコース)は、直近2回で合格率が大きく振れました。

メンタルヘルス・マネジメント検定Ⅱ種の合格率

単位:%

第39回(2025年11月2日)

第40回(2026年3月15日)

※出典:メンタルヘルス・マネジメント検定試験「結果・受験者データ」。第39回は実受験者12,887人中6,160人、第40回は13,865人中10,819人が合格。

同じ試験で47.8%と78.0%。合格基準は100点満点で70点以上と固定なので、この差は問題の難易度差がそのまま出た形です。

「合格率78%だから簡単」と書かれた情報を見て申し込むと、次の回で47%側を引くことがあります。

合格率の平均値ではなく、直近数回の幅で見ておくと想定が外れにくくなります。

Ⅰ種(マスターコース)は19.4%で、性質が変わります。論述試験があり、人事制度としてメンタルヘルス対策を設計する立場を想定した内容です。

資格は「会社が必要とするもの」と「自分に残るもの」に分かれる

ここまでのデータを、目的別に整理します。

衛生管理者会社が必要とする事業場50人以上で選任義務。取得すれば社内の法令対応に直結。合格率46.8〜48.7%
メンタルヘルス検定会社が必要とする選任義務はないが、ストレスチェックや休職対応の実務にそのまま使える。Ⅱ種で47.8〜78.0%
社会保険労務士自分に残る書類の作成・提出代行が独占業務。独立開業も可能。ただし合格率5.5%
キャリアコンサルタント自分に残る面談・研修の裏付けになる国家資格。試験は6割前後が合格するが、受験資格を得る養成講習に約30万円
日商簿記・ビジネス実務法務検定どちらでもない補強人件費の予算管理や契約・労務トラブルの基礎知識として効く

順序として無理がないのは、まず衛生管理者、次に社労士かキャリアコンサルタントのどちらかという流れです。

衛生管理者は費用が最も軽く(受験手数料8,800円)、勤務先が求めている可能性もあります。

一方、社労士とキャリアコンサルタントはどちらも数十万円か数百時間の投資。同時には走れません。

この2つは性質が逆です。社会保険労務士は業務独占で法律に守られている代わりに合格率5.5%。

キャリアコンサルタントは試験の合格率58.8%と通りやすい代わりに、受験するまでに養成講習の修了が要り、そこで約30万円かかります。

守られ方を取るか、到達しやすさを取るかで分かれます。

難易度の内訳と収入への効き方はキャリアコンサルタント試験の記事にまとめています。

人事の中でどの仕事をしたいかで答えが変わる

給与計算・社会保険手続き・就業規則といった労務管理が中心なら、社労士の知識がそのまま効きます。

採用面接・社員面談・研修・キャリア支援が中心なら、キャリアコンサルタントの内容と重なります。

同じ人事部でも担当が違えば、必要な知識は変わる。いま自分の机の上にある業務から選ぶと外れにくくなります。

資格より先に効くもの

job tagが人事事務に挙げているのは、資格ではなく次の5つです。

労働法規・社会保険の知識

法改正が毎年あり、対応を誤ると会社の法令違反になる領域。資格の勉強がそのまま実務になる部分。

部門間の調整力・折衝力

他部門・労働組合・行政官庁との交渉が日常的にある。資格試験では測られない部分。

情報収集力

改正情報や他社の制度を追い続ける必要がある。官公庁の一次情報にあたる習慣が効く。

守秘義務を守る誠実さ

給与・評価・健康状態など、社内で最も繊細な情報を扱う。

公正な判断力

採用・評価に私情を挟まない姿勢。人事の信頼はここで決まる。

出典:厚生労働省job tag「人事事務」の「就業するには?」欄。

このうち資格で身につくのは1つ目の知識だけです。残り4つは業務経験でしか積めません。

だから「資格を取ってから人事に行く」よりも、人事の仕事をしながら知識の穴を資格で埋める順序のほうが自然だと思います。

なお人事のキャリアの先には、人事課長などの管理職、資格取得による専門性の強化、人事コンサルタントへの転身・独立といった道があります。

Eduriaの人事担当者の仕事ページに職務内容とキャリアパスをまとめています。

講座を使う場合

社労士とキャリアコンサルタントは、独学の可否が正反対です。社労士は独学で受験できますが合格率5.5%。

キャリアコンサルタントは試験自体は通りやすい一方、独学では受験資格そのものが得られません。

LECオンライン(東京リーガルマインド)

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法律系資格の大手スクール。社労士の講座に加え、科目別の答練・模試だけを単発で使うこともできます。独学で進めて答練だけ外部で受ける、という組み合わせが取りやすいのが特徴です。

無料体験講座あり

公式サイトで講座を見る

生涯キャリア支援協会(パソナ)の養成講習

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キャリアコンサルタントの受験資格を得るための厚生労働大臣認定講習。養成講習と試験対策をフルオンラインで5.5か月、受講料385,000円(税込)。専門実践教育訓練給付金の指定講座なので、条件を満たせば自己負担が下がります。企業内人事のスキルアップ目的で受講する人向けのコースがあります。

385,000円(税込)/給付金指定講座

オンラインガイダンスを見る

キャリアコンサルタント養成講習は、専門実践教育訓練の指定講座になっているものが多くあります。

雇用保険の条件を満たせば受講費用の50%、資格取得と就職・賃金上昇の条件まで満たせば最大80%が支給されます。

ただし受講開始の2週間前までにハローワークでの手続きが要るので、申込前に確認しておきたい点です。

手続きの流れはキャリアコンサルタントの記事にまとめています。

なお学び直しが途中で止まる理由は、国の調査では意志ではなく条件の側にあります。

自己啓発で問題を感じている正社員の55.9%が「仕事が忙しくて余裕がない」、25.7%が「費用がかかりすぎる」を挙げています(リスキリングの実情の記事)。

時間の確保が先に決まっていないと、費用の話まで進んでも続きません。

まとめ

  • 必須資格はない:job tag「人事事務」に学歴・資格の必須要件なしと明記
  • 例外は衛生管理者:常時50人以上の事業場で選任義務。合格率46.8〜48.7%、受験手数料8,800円
  • メンタルヘルス検定Ⅱ種:直近2回で47.8%と78.0%。回による難易度差が大きい
  • 社労士かキャリコンかは担当業務で決まる:労務中心なら社労士、面談・研修中心ならキャリコン
  • 資格で埋まるのは知識だけ:調整力・情報収集力・守秘義務・公正さは実務でしか積めない

次にやること — 勤務先の事業場に何人いるか、衛生管理者が何人選任されているかを数えてみてください。50人以上で欠員があるなら、それが会社が今いちばん必要としている資格です。


衛生管理者試験の最新の合格率は安全衛生技術試験協会、メンタルヘルス・マネジメント検定の結果は結果・受験者データで公表されます。

衛生管理者の選任義務の詳細は東京労働局のページ、職業情報は厚生労働省job tagが一次情報です。

※本記事にはプロモーションが含まれます