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入学金は返ってこない|併願校の納入期限と、延納・返還のルール

合格通知と一緒に届いた振込用紙の期限が、第一志望の発表日より前になっていて困っている人へ。入学金と授業料でどこまで戻るのかが違う理由、公立・国公立の発表を待ってくれる延納制度、募集要項のどこを見れば分かるのかを、最高裁の判断と国・都県の公表資料をもとに整理しました。

#入学金#延納#高校受験#大学受験#学費

合格通知と一緒に、入学手続きの書類が届きます。ほっとしたのも束の間、納入期限の日付を見ると、第一志望の発表日より前になっている。払わなければ合格が消えるし、払ったあとに第一志望に受かれば、その分は戻ってこないかもしれない。

金額は20万円台がふつうです。家族に相談しにくくて、ひとりで抱えている人もいると思います。

先に結論から書くと、入学金は辞退しても返ってこないというのが裁判所の判断です。ただし入学金以外のお金は3月31日までなら返ってくるのが原則で、さらに高校受験では、公立の発表まで納入を待ってくれる学校のほうが多数派です。何が戻って何が戻らないのか、順番に見ていきます。

入学金は、辞退しても戻ってこない

これは学校が意地悪をしているわけではなく、裁判で決着がついている話です。

最高裁判所は2006年11月27日の判決で、入学金について次のように判断しました。学生は入学金を納めたことで「大学に入学し得る地位又は学生たる地位を取得」しており、その対価をすでに受け取っている。だから、あとから入学を辞退しても返還を求めることはできない、という理屈です(消費者庁消費者契約法 逐条解説第9条の解説に判示内容が掲載されています)。

つまり入学金は「授業を受けるためのお金」ではなく、「席を確保しておくためのお金」だと整理されています。席を押さえた時点でサービスは提供済み、という考え方です。納得しづらいかもしれませんが、ここが動かない以上、二重払いを避ける方法は「そもそも納めずに済ませる」しかありません。

同じ最高裁は同年12月22日、鍼灸の学校についても、在学契約や納付金の性質は「大学における場合と基本的に異なるところはない」と述べています。大学だけの話ではなく、専門学校でも同じ扱いになります。

入学金以外は、3月31日までなら戻るのが原則

一方で、授業料や施設設備費は扱いが違います。

同じ判決は、4月1日には学生がその大学に入学することが高い確率で予測できる状態になる、と考えました。裏を返せば3月31日までに辞退すれば大学に損害は生じていないので、「納めたお金は一切返さない」という特約は全部無効になる、という結論です。募集要項に不返還と書いてあっても、3月31日までの辞退なら授業料は戻ります。

文部科学省もこれを受けて、大学入学者選抜実施要項のなかで各大学に次の対応を求めています(令和9年度大学入学者選抜実施要項第10)。

1

3月31日までに辞退を伝えれば、授業料等は返ってくる

「原則として、受験者が納付した授業料等及び諸会費等の返還に応じる」とされています。入学金はここに含まれていません。

2

ただし、専願・学校推薦型選抜の合格者は対象外

要項の文言は「専願又は学校推薦型選抜(これに類する入学試験を含む。)に合格して大学等と在学契約を締結した受験者を除く」です。指定校推薦などで入学を約束して合格した場合、授業料まで戻らない可能性があります。ここは見落とされやすいところです。

3

入学式の無断欠席を辞退とみなす学校もある

募集要項に「入学式を無断欠席した場合には入学を辞退したものとみなす」と書かれている場合は、入学式の日までに辞退すれば授業料等の返還に応じる、とされています。逆に言えば、そう書かれていない学校で黙って行かないだけでは、辞退として扱われません。

返還は自動ではなく、学校が定めた期限までに辞退を申し出て初めて処理されます。判決のなかには、大学職員から「返還を受けるための入学辞退届は3月25日必着」と言われて手続きの機会を失った学生について、大学が返還を拒むことは許されないとしたものもあります。それだけ期限まわりの行き違いが起きやすい手続きだということです。

高校受験:待ってくれる学校のほうが多い

私立高校の場合は、公立の発表を待ってくれる「延納」という仕組みが広く使われています。数字で見ると想像より手厚いです。

神奈川県が公表した令和8年度の資料では、全日制の公募校57校のうち52校が公立高校の併願者に対する入学金の延納措置を実施していました。内訳は全額を延納できる学校が42校、一部を延納できる学校が10校です。さらに、単願か併願かにかかわらず入学手続きの締切日そのものを公立の発表日以降に設定している学校も、この52校のなかに複数あります(神奈川県令和8年度私立高等学校・中学校・中等教育学校生徒募集及び生徒納付金概要について)。

同じ資料によると、神奈川県内の私立高校の一般入試は2月10日以降、全日制公募校の78.8%が2月10日に試験を実施します。対して県内公立高校の合格発表は2月27日です。この17日間をどう扱うかが、延納制度の中身ということになります。

裏返せば、延納のない学校も5校あります。「私立はどこも待ってくれる」と思い込んだまま出願すると、ここで詰まります。

動く金額は、入学金だけで20万円台

延納があるかどうかで、実際にいくら違うのかを見ておきます。

入学金・入学料の平均額(1校あたり)

私立は高校でも大学でも20万円台。公立高校とは40倍以上の開きがあります。

単位:円

国立大学(学部・標準額)

都内私立高校(全日制)

私立大学(学部)

私立短期大学

神奈川県私立高校(全日制)

国立高校・中等教育学校後期課程

都立高校(全日制)

※出典: 文部科学省「私立大学等の令和7年度入学者に係る学生納付金等調査結果」、東京都「令和8年度 都内私立高等学校(全日制)の学費の状況」、神奈川県「令和8年度私立高等学校生徒募集及び生徒納付金概要」、国立大学等の授業料その他の費用に関する省令(平成16年文部科学省令第16号)、東京都教育委員会。

私立高校の入学金の平均は、東京都が254,599円(233校)、神奈川県が223,087円(全日制公募校)です。神奈川県の資料では、入学金以外も含めた「入学時納付金」の合計は平均366,543円になります。入学手続きの時点で36万円が動く、ということです。

大学のほうは、私立大学の入学料が平均240,365円、授業料・施設設備費まで含めた初年度納付金は平均1,507,647円でした(592大学。文部科学省私立大学等の令和7年度入学者に係る学生納付金等調査結果)。国立大学の入学料は省令で282,000円が標準額と定められていて、各大学はその120%を超えない範囲で額を決められます。

比較用に置いた都立高校の入学料は5,650円です(東京都教育委員会)。公立を第一志望にして私立を併願する場合、延納が使えないと、進学しない学校に20万円台を置いてくることになります。

大学受験:国公立の発表前に、私大の期限が来る

大学では、この時期のずれがもっと大きくなります。私立大学の一般選抜の合格発表は2月中が中心で、国公立大学の前期日程の発表は3月上旬、後期日程は3月下旬です。私立の入学手続き期限が国公立の発表より前に来るのは、珍しいことではありません。

文部科学省は選抜実施要項のなかで、入学金以外の学生納付金について「合格発表後、短期間内に納入させるような取扱いは避ける」よう各大学に求めています。1975年(昭和50年)の通知を引き継いだ記述です。50年前から同じことを言い続けているという事実が、この問題の根深さを表しているように思います。

「入学金だけ先に、残りは後で」という形が多い

私立大学の入学手続きは、一次手続きで入学金だけを納め、授業料などの残りは国公立の発表後の二次手続きで納める、という二段階に分かれている大学が少なくありません。この形なら、国公立に受かった場合に失うのは入学金だけで済みます。ただし何がいつまでに必要かは大学ごと・入試方式ごとに違うので、出願前に募集要項の「入学手続」のページを見ておくと、あとで慌てずに済みます。

募集要項のどこを見るか

延納も返還も、学校が制度を用意していて、なおかつ期限内に手続きをした人だけが使えます。出願先を決める段階で見ておきたいのは次の4点です。

入学手続きの締切日と、第一志望の発表日

この2つを並べて書き出すのが出発点です。締切のほうが後なら、そもそも延納の心配は要りません。前なら、次の項目を確認することになります。

延納は全額か、一部か

神奈川県の例では、全額延納が42校に対して一部延納が10校でした。一部延納の場合、入学申込金などの名目で数万円を先に納め、残りを公立の発表後に納める形が多く見られます。

延納に申請が必要かどうか

自動的に適用される学校もあれば、期日までに延納の届出を出さないと通常の締切が適用される学校もあります。申請の締切が入学手続きの締切より早いこともあります。

辞退したときに返るのはどの費目か

入学金は返らないのが原則です。施設費・諸会費・教材費などは学校の規定によります。募集要項の「納入金の返還」という項目に書かれています。

学校説明会やオープンキャンパスで直接聞いてもいい質問です。お金の話を聞くのは気が引けるかもしれませんが、毎年何百人も同じことを聞いているので、事務室では日常的なやり取りです。

制度で下げられる分は先に確認しておく

入学金そのものを減らす仕組みは多くありませんが、初年度の負担全体で見れば使える制度があります。私立高校は都道府県の授業料軽減助成や国の就学支援金、大学は日本学生支援機構の給付型・貸与型の奨学金や、大学独自の入学金免除・分納制度です。

文部科学省は選抜実施要項で、納付が困難な学生に対する減免・分割納入・納付時期の猶予といった措置を積極的に講じ、その内容を募集要項に明記するよう各大学に求めています。制度が載っているのに気づかれていない、という状態はよくあります。

学費全体の見取り図は大学の学費を徹底比較に、申し込み時期が早い奨学金の話は奨学金の申し込み方法と種類にまとめてあります。

まとめ

  • 入学金:辞退しても返らない。最高裁が2006年に判断済み。専門学校も同じ
  • 授業料など:3月31日までに辞退すれば原則返る。専願・推薦での合格は対象外の場合がある
  • 高校受験:神奈川県では全日制公募校57校中52校が入学金の延納を実施
  • 金額の目安:私立高校の入学金は平均22万〜25万円、私立大学は約24万円
  • 延納も返還も自動ではない:期限内の申し出が要る制度

次にやること — 併願する予定の学校の募集要項から「入学手続」のページを開いて、締切日を第一志望の発表日と並べてメモしてください。この2つの日付の前後関係だけで、延納を調べる必要があるかどうかが決まります。

※この記事の数値は2026年7月時点で公表されている資料に基づいています。入学手続きの期限・延納・返還の扱いは学校ごとに異なり、年度によっても変わります。最新の情報は各校の募集要項と、東京都都内私立高等学校(全日制)の学費の状況、神奈川県私立高等学校生徒募集及び生徒納付金概要などの都道府県公表資料で確認できます。

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