「1人1台端末」の学校、端末代は誰が払う?公立・私立の費用負担とICT環境の見分け方
学校説明会で「1人1台端末」と聞いたものの、端末代が入学時にいくらかかるのか、家計にどう響くのかが分からない保護者へ。公立・私立で分かれる費用負担の実際、機種ごとの価格帯、デジタル教科書の無償化の行方を整理しました。
学校説明会で「1人1台端末です」と言われて、そこで終わってしまう。パンフレットにも同じ言葉が並んでいる。でも肝心のことが分かりません。
その端末代は誰が払うのか、入学時の初期費用に入っているのか、後から7万円の請求が来るのか。
同じ「1人1台」でも、費用を誰が負担しているか、家に持ち帰れるか、授業でどこまで使われているかは学校によってかなり違います。
端末が配られているかどうかは、もはや学校を比べる材料になりません。
端末は更新期に入っている
GIGAスクール構想は2019年度に始まり、コロナ禍対応で前倒しされた第1期の端末は、導入の早い自治体ではすでに6〜7年目を迎えています。
国はこれを受けて、2024年度から2028年度を計画期間とする「GIGAスクール構想2.0(NEXT GIGA)」を進めています。
2023年度補正予算では端末更新に2,661億円を計上。1台あたりの補助上限額も45,000円から55,000円へ引き上げられました。
第1期は自治体ごとの個別調達が中心でしたが、第2期は都道府県単位での共同調達が原則になり、コストの効率化が図られています。
とはいえ更新が計画通りに進むかは自治体の財政力に左右されます。
学校のICT環境を比べるときは「端末があるか」より「更新計画がはっきりしているか」のほうが、実態に近い手がかりになります。
なお、端末の整備状況そのものに地域差はほとんどありません。
文部科学省の令和6年度調査(令和7年3月1日時点)によると、児童生徒1人当たりの学習者用コンピュータ台数は全国平均1.1台。
最も多い都道府県でも1.2台、最も少ない都道府県(埼玉県)でも1.0台と、都道府県間の差はごくわずかです。
台数はもう差がつく項目ではない、ということです。
公立と私立で分かれる費用負担のかたち
義務教育段階の公立小中学校では、端末は自治体が公費で用意するのが基本です。これに対し高校段階になると事情が変わります。
文部科学省の令和6年度調査によると、公立高校のうち端末費用を設置者(教育委員会)が負担する自治体が89、保護者が負担する自治体(BYOD)が64と、方式が割れています。
公立高校の端末費用負担方針(自治体数)
単位:自治体
設置者(教育委員会)が負担
保護者が負担(BYOD)
※文部科学省「高等学校段階における学習者用端末の整備状況について」(令和6年度当初)
公立高校でも、住んでいる自治体次第で数万円の差が出るということです。
私立高校ではさらに保護者負担の比率が上がります。
旺文社が全国の高校を対象に行った調査では、学校指定の端末を個人負担で購入する「BYAD」型が約4割、生徒が各自用意する「BYOD」型が2割弱でした。
家庭が費用を負担する端末は、全体の6割程度にのぼります。
「私物端末で個人の判断でどんなサービスでも使える」と回答した学校の割合も、国公立高校の12.2%に対し私立高校は32.8%と、私立のほうが運用の自由度が高い傾向がうかがえます。
私物端末で自由にサービスを使える学校の割合
私立高校のほうが自由度が高い結果でした
単位:%
私立高校
国公立高校
※旺文社の高校ICT環境調査より。「私物端末で個人の判断でどんなサービスでも使える」と回答した学校の割合
負担が重い代わりに自由度は高い。私立の傾向はこう読めます。どちらを重く見るかは家庭によって分かれるところです。
PC・タブレットは実際いくらかかる?
保護者負担(BYOD/BYAD)の場合、端末そのものの価格帯は機種によって幅があります。
| Chromebook | 3万円〜6万円程度 |
| iPad | モデルにより数万円〜10万円超 |
| 学校指定端末(付属品・保証込み) | 7万円前後になる例もある |
学校が機種・購入ルートを指定する「BYAD」方式では、端末本体だけでなくケース・保証・学習用アプリのライセンス費用が一式に含まれることが多く、単体の端末価格より総額が上がります。
公費負担から保護者負担への切り替えが進んでいる
香川県の公立高校では、端末・アプリ・付属品一式で72,000円(県の半額補助適用後は保護者負担36,000円)が新入生に見込まれています。
コロナ禍対応の交付金を使って県が無償貸与していた端末が、交付金の打ち切りにより「生徒個人が所有する学用品」という扱いに切り替わったためです。
埼玉県も同様に、令和5年度入学生から端末準備費用を保護者負担とする方針に転換しました。
この動きは香川県・埼玉県に限りません。つまり、上の学年の保護者から「うちのときは無料だった」と聞いても、それはもう当てになりません。
同じ学校でも入学年度で方式が変わっている場合があります。
購入前に見ておきたいところ
- 分割払い・リースの制度があるか、一括購入以外の選択肢が用意されているか
- 学校指定の業者経由でしか購入できないか、家電量販店等で同等品を用意してよいか
- 入学時に提示される「初期費用」の中に端末代がすでに含まれているか、別途請求になるか
デジタル教科書は2030年度から「正式な教科書」に
デジタル教科書は2021年度に実証事業として始まり、2024年度からは小学5年生〜中学3年生の英語・算数(数学)を対象に、紙の教科書と併用する形の導入が全国で進んでいます。
文部科学省によると、令和6・7年度時点で英語は全国の学校の100%、算数・数学は50〜60%の学校に提供されており、対象校では家庭の追加負担なく利用できています。
現状は「無償給与」ではなく国の予算による無償提供
ここは区別しておきたいところです。現行のデジタル教科書は法律上「教科書(教科用図書)」ではなく「教科書代替教材」という扱いです。
紙の教科書のような学校教育法上の使用義務はなく、検定・採択・無償給与法の対象にもなっていません。
今の「無償」は、文部科学省が単年度予算(実証事業費、2024年度以降は購入費)を使って学校に配布しているために成り立っています。
法律で保障された恒久的な無償措置ではなく、予算措置に基づく現状、という位置づけです。
2026年6月、義務教育を無償給与の対象とする法改正が成立
この位置づけを変えるため、中央教育審議会の作業部会は2025年9月、デジタル教科書を紙と同格の「正式な教科書」とする審議まとめを了承しました。
これを受けて、学校教育法・教科書無償措置法などの改正法が2026年6月10日に成立し、施行日は2027年4月1日と定まっています。
改正法により、義務教育段階では紙・デジタル・両者を組み合わせた「ハイブリッド教科書」のいずれも、紙の教科書と同様に検定・採択・無償給与の対象になることが法律に明記されました。
ただしこれは、制度の枠組みが整うタイミングです。
実際に自治体・学校が3種類から教科書を選び、新しい教科書として使用が始まるのは、次期学習指導要領の実施に合わせた2030年度からの見込みです。
高校段階は紙と同様、有償のまま推移する可能性
高校は義務教育ではないため、紙の教科書も現在有償(生徒・保護者負担)です。
今回の法改正でも、無償給与に関する条文は「義務教育諸学校の教科用図書の無償に関する法律」など義務教育諸学校を対象とした法律の改正にとどまり、高校向けの無償化規定は含まれていません。
高校段階のデジタル教科書も、紙の教科書と同じく生徒・保護者負担が続く可能性が高いとみられます。
ただし高校段階の具体的な費用負担の仕組みについて文部科学省が明言している資料は確認できておらず、今後の省令や自治体の判断による部分が残ります。
学校のICT活用度を見極めるポイント
パンフレットに並ぶ「ICT教育に力を入れています」という言葉だけでは、実態は分かりません。学校見学や説明会では、次の点を聞くと差が出ます。
- 校内Wi-Fiは教室だけでなく校舎全体で使えるか(旺文社調査では「校内どこでも無線利用可」と答えた高校は47.1%にとどまり、半数以上が教室限定などの制限つきです)
- 端末を家庭に持ち帰る頻度は週にどれくらいか、日常学習用か非常時のバックアップ用か
- 探究学習やプロジェクト型学習で、端末やクラウドツールをどう使っているか具体例があるか
3つ目の質問に具体例がすらすら出てくるかどうかで、その学校の実際の使い込み具合はかなり見えます。
まとめ
- 台数では差がつかない:1人当たり端末数は全国平均1.1台、県間の差はごくわずか
- 公立高校でも割れる:設置者負担89自治体、保護者負担64自治体
- 私立はさらに保護者負担寄り:BYAD約4割・BYOD2割弱。代わりに運用の自由度は高い
- 金額の目安:Chromebook3〜6万円、学校指定端末は7万円前後になることも
- デジタル教科書:義務教育は2027年4月施行の法改正で無償給与の対象へ。高校は有償が続く見込み
次にやること — 志望校の説明会で、「今年度の新入生は端末代をいくら負担しましたか」と年度を区切って聞いてください。上の学年の話や過去のパンフレットは、交付金の打ち切りで前提が変わっている場合があります。
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