研究者を目指すなら大学院までに知っておきたい、国の経済支援制度
「研究者になりたい」と言われても、博士後期課程まで進むと20代の後半まで学生生活が続きます。その間の学費と生活費が続くのか不安な高校生・保護者に向けて、文部科学省が用意する大学院生・若手研究者向けの経済支援制度(大学フェローシップ創設事業・卓越研究員事業など)を進学段階別に整理しました。
「将来は研究者になりたい」という言葉を聞いたとき、多くの家庭が最初に詰まるのはお金の話です。
学部4年で就職する道と違い、大学院はさらに2〜5年かかります。博士後期課程まで進めば20代の後半まで学生で、その間の生活費の見通しが立たない。
理系進学をためらう理由として、これはかなり大きい部分です。
文部科学省は、大学院生から若手研究者まで、進学段階に応じた支援制度をいくつか用意しています。
ここでは、それぞれの制度が「どの段階の人」を対象にしているかを整理します。
なお、高校在学中に参加できるSSH・科学の甲子園・STELLAなどの制度は、理系に強くなる進路、SSH・科学オリンピック…7つの支援制度を学年別に整理で扱っています。
今回は「大学に入ったその先」の話です。
研究者への道のりと、対応する支援制度
高校生のうち
理数系の探究活動に取り組んでおくと、大学・大学院での研究活動の土台になります。SSH指定校での研究活動やSTELLA、国際科学技術コンテストなどが該当します。
学部生〜大学院修士課程
この段階を対象にした専用の経済支援制度は、今回取り上げる文部科学省の一覧には見当たりません。研究室選び・指導教員との相性を見ながら、博士後期課程に進むかどうかを考える時期になります。
修士課程から博士後期課程に進学するとき
「大学フェローシップ創設事業」の対象になります。博士後期課程学生の処遇向上・キャリア支援に全学的に取り組む大学を、国が支援する仕組みです。
博士後期課程在学中(データ関連分野志望の場合)
「D-DRIVE」の対象になり得ます。大学・企業のコンソーシアムが、博士課程学生・博士号取得者にデータサイエンスのスキルを習得させるプログラムです。
博士号取得後、若手研究者として
「卓越研究員事業(LEADER)」の対象になり得ます。世界水準の研究能力を持つ若手研究者が、安定したポストで研究を続けられるよう、国がマッチングを支援します。
支援が薄いのは修士課程までの区間です。ここに専用の制度が見当たらないという事実は、先に知っておいたほうが計画を立てやすいと思います。
各制度の内容
大学フェローシップ創設事業
修士課程から博士後期課程に進学する優秀な人材を確保するため、博士後期課程学生の処遇向上とキャリアパス支援に全学的に取り組む大学を、国が支援する事業です。
論文の筆頭著者の約2割を博士後期課程学生が占めているとされ、研究を支える存在として位置づけられています。
支援額は大学・年度によって異なる
生活費・研究費として具体的にいくら支給されるかは、この制度の公式ページには書かれていません。実施するかどうかも、支援額も、大学ごとの公募・選定結果で決まります。つまり「この制度があるから安心」とは言えず、志望大学が対象になっているかどうかで話がまったく変わります。
卓越研究員事業(LEADER)
2016年度に始まった事業で、若手研究者が新しい研究領域に挑戦しながら、安定した環境で自立して研究を続けられるようにすることを目的としています。
日本は研究者の雇用が不安定になりやすく、産学官をまたいだ人材の流動性も低いという課題があり、それに対応する形で作られました。
仕組みは3段階です。
①受け入れ機関がポストを公募し、②候補者が審査で選ばれ、③候補者と機関のマッチングが成立すると、一定期間の研究費等の支援を受けられます。
世界水準の研究能力があり、産学官どこでも活躍する意欲がある人が対象です。
D-DRIVE(データ関連人材育成プログラム)
大学と企業がコンソーシアム(連携体)を組み、博士課程の学生・博士号取得者にデータサイエンスのスキルを習得させるプログラムです。
基礎教育に加えて、企業の実データを使った課題解決型学習(PBL)やインターンシップも組み込まれており、アカデミア・産業界のどちらでも活躍できる人材の育成を目指しています。
博士に進んでも進路がアカデミアだけに固定されない、という点で見通しが立てやすくなる制度です。
その他、知っておくと役立つ関連制度
上記3つ以外にも、対象を絞った制度がいくつかあります。
統計エキスパート人材育成プロジェクト/高度統計人材育成強化拠点形成事業
統計・データ分野の専門人材を育成する拠点づくりを支援する制度。
研究開発マネジメント人材体制整備事業
研究者を支えるURA(リサーチ・アドミニストレーター)など、研究マネジメント人材の育成・確保を進める制度。
ライフイベント両立支援
出産・育児・介護などのライフイベントと研究を両立できるよう、研究環境の整備を支援する制度。
よくある質問
文系でもこれらの制度は使える?
制度によります。大学フェローシップ創設事業やD-DRIVEは分野を限定する記載が公式ページ上には見当たりませんが、実際に対象になるかは大学・分野ごとの公募内容次第です。志望する研究科の大学院担当窓口が、この点の一次情報になります。
高校生の今からできる準備は?
理数系の探究活動やSSH・STELLA・国際科学技術コンテストなどへの参加が、大学・大学院での研究活動につながる土台になります。詳しくは理系に強くなる進路、SSH・科学オリンピック…7つの支援制度を学年別に整理で扱っています。
支援額の具体的な金額はどこに書いてある?
今回紹介した制度の公式ページには、統一の金額は載っていません。金額が書かれているのは大学ごと・年度ごとの公募要領で、志望大学が制度の対象になっているかを含め、大学院の学生支援窓口が確実な問い合わせ先になります。
まとめ
- 段階ごとに制度がある:博士後期課程は大学フェローシップ、取得後は卓越研究員事業
- データ分野なら:D-DRIVE。企業での進路も視野に入る
- 金額は公表されていない:支援額も実施の有無も大学・年度の公募次第
- 修士までは空白地帯:この一覧に修士向けの専用制度は見当たらない
- 高校生の今できること:SSHや探究活動で理数の土台を作る
次にやること — 志望候補の大学を1校だけ選んで、大学院の学生支援ページに「大学フェローシップ創設事業」の名前があるかを見てみてください。載っているかどうかで、その大学に進んだ場合の博士課程の見通しがかなり変わります。
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